伊予高日誌
ネコの話
2021年7月15日 14時31分ケガしたノラネコに…
7月の金曜日、伊予鉄電車に乗って帰宅するため、伊予高校を出て松前駅に向かって歩いていたときのこと。私が歩く道の前方に、4人の伊予高3年生男子が集まっていました。どうかしたのかと思って声をかけると、「ネコがケガしています。」見ると、ネコが、道端にうずくまっていました。生徒が「朝、見かけたときと同じ場所にいます」「ケガしています。病院でみてもらったほうが…」と言いました。私は毎日朝晩、その場所を通っていましたが、その日、ネコがうずくまっているのに気付きませんでした。
ネコにきれいなタオルがかけられていたので、「タオルは?」と尋ねると、「ぼくのタオルです」と生徒の一人が答えました。ネコに缶詰のエサが与えられていたので、「エサは?」尋ねると、別の一人が「ぼくがやりました」と言いました。生徒は、エサの缶詰を持ってきていたのです。自分の家で飼っているネコではない、年とったノラネコを、生徒たちは心配して介抱していたのです。私は、思いがけないことに、ただただ驚きました。
生徒たちがネコを心配して立ち去らないので、私も何かしなくてはと思いました。私は毎日この道を行き来していて、すぐ近くにネコを何匹も飼っている家があるのを知っていました。そこで、その家のインターホンを初めて押して、ネコの世話をしているおじさんを呼び出しました。「すみません。ネコがケガしているようなのですが、お宅のネコでは?」と、おそるおそる、おじさんに尋ねました。おじさんは、すぐ出てきて、ネコを見て言いました。「このネコはノラだが、うちへ来てエサを食べています。昼には、うちに来て食べていましたよ。心配はいりません。」とおじさんが言いました。電車の時間を気にしていた私は、その言葉を聞いて、あとはそのおじさんに任せればいいと思いました。生徒たちも、おじさんの言葉を聞いて、自転車に乗っていなくなりました。
次の月曜日の朝のことです。いつもの時間にその場所に通りかかると、おじさんが道端で待っていました。おじさんから私に「先週の金曜日はありがとうございました。ネコがケガしていることに気が付きませんでした。あのあと、ネコを動物病院に連れて行ったのですが、今朝、亡くなりました。生徒さんたちに、くれぐれもお礼を言っていたと伝えてください。」と丁重に話がありました。私は、ネコが亡くなった残念な気持ちとともに、世話してくれたおじさんにお礼が言いたくて、頭を下げました。
そして、学校への道を進みながら、伊予高校3年生男子4人の、ケガしたノラネコを心配してくれた、その優しさに感動しました。「命を大切に」という言葉を聞きますが、彼らは、言葉だけでなく、きちんと実践したのです。そんな気遣いが自然にできる生徒が、私たちのこの伊予高校にいることが、とてもうれしいのです。